フジTV 暴力行為が併存するハラスメント

本件は、2022 年 7 月に発生した、編成制作局バラエティ制作部(当時)の男性社員 b 氏(プロデューサー)から、同バラエティ制作部に所属する女性社員に対する暴力行為が併存するハラスメントが問題となった事案である。

幹部社員B氏 G 氏(中居氏事案関係者)

2022 年 9 月頃、女性社員はバラエティ制作センター担当部長の e 氏に相談をした。 e 氏は、本件を真剣に捉えるべきと考え、当時のバラエティ制作部部長であった B 氏に相談し、自分が当事者二人に事情聴取をしてみようと思う旨報告して、了承を得た。

b 氏に確認をしたところ、b 氏は、セクハラ行為を「事実無根」と否定した。

e 氏から報告を受けた B 氏は、①女性社員から e 氏への相談まで時間が空いていたこと、②女性社員が本件を大ごとにしたくないと考えていると聞いたこと、③b 氏は記憶がないということだが、反省の意思を示したと聞いたこと、などを理由として、本件を不問に付し、上司、コンプライアンス推進室、人事局などに報告をしなかった。

b 氏への異動や処分などの発令がなく「お咎めなし」となったことに不信を感じた第三者が、2023 年 9 月に、バラエティ制作センター室長であった f 氏(以下「f 氏」という)に本事案を報告した。

女性社員からセクハラ被害とこれに伴う暴力行為の話を聞き、 b氏にも事情を確認しようとしたものの、女性社員の特定を避ける観点から、具体的な事実関係の確認まではできず

f 氏は、本件を編成制作局長である G 氏に報告したが、その後の判断を G 氏に預けた認識でおり、一方、G 氏は、当時、本件についてセクハラ行為が併存している旨の報告を受けておらず、暴力が単体で問題となっていた案件と認識していたとのことであり、事実関係を狭く捉えていた。

本人が「大ごとにしたくない」と述べていることを重視して、本件を、編成担当役員であった大多氏に報告することも、コンプライアンス推進室や人事局に報告・相談することも無く b氏に 異動等処分もおこなわなかった

2023 年 12 月に、本件を聞き及んだ第三者によりコンプライアンス社内相談窓口に対して内部通報された。コンプライアンス推進室は、ほどなく調査に着手し、外部の顧問弁護士からの助言、調査協力を得ながら、2024 年 5 月に調査報告書を完成させ、人事局に提出した

b 氏は、コンプライアンス推進室による調査に対して暴力行為は概ね認めていたが、セクハラ行為及びこれに伴う暴力行為は否定した。

第三者委員会としては、当時、コンプライアンス推進室が作成、収集した資料や当時判明していた客観的事実、女性社員や周囲からの証言内容などを総合的に勘案すれば、セクハラ行為の存在も、これに伴う暴力行為も、優に認定し得ると判断する。コンプライアンス推進室の報告書も、いずれも存在することが前提になって作成されている。

P162 (5) b 氏への処分
上記報告書の提出を受け、CX 内では、同年 7 月に賞罰審査委員会が開催され、顧問弁護士からの、本件は刑法に違反する事案に該当し得るものの、汲むべき事情があることも考慮して審議されたい旨の意見も紹介され、その後、参加者間の議論が行われた。

同賞罰審査委員会では、人事局から、謹慎●日間の処分案が提案され、その理由については、b 氏は、部分的にではあるが事実を認めて反省し、その後問題なく勤務をしていること、幸いにも、女性社員が本件をきっかけに就業不能というような状態には陥っておらず、また、本人が大ごとにしたくないとの気持ちで処罰感情を大きく表明していなかったこと等からすれば、雇用維持を前提にした処分が妥当であると判断したと説明

議論後 上記処分案が多数決で決定された。処分は同月に b 氏に通達され、本人が受け入れたため決定した

また、B 氏については、上司等に報告しなかったこと及び管理監督者としての責任をもって減給処分、f 氏、G 氏についても管理監督者としての責任をもって、譴責処分が決定されている。

ア バラエティ制作部内でのみ情報を留め置いた
B 氏は、部下を介して間接的な注意を与えたのみで、上司やコンプライアンス推進室、人事局等への報告 本件対応を行っていない。
かかる判断をした理由について、「大ごとにしたくない」という意向に寄りかかって、管理者として必要な対応を取らなかったことは不適切である。
G 氏の判断についても、B 氏と全く同様のことが言える。結果として b 氏を不問に付したことにより、罰せられることなく地位が温存される職場なのであるとの認識を部内の従業員に与えてしまった。

イ 調査手法に関する港社長の介入
港社長(当時)は、コンプライアンス推進室による調査が進行中であった 2024 年 3 月29 日、担当者らを呼び、本件に関する調査について、突然に呼び出して聴き取を行う一方で関係者に秘密を要求したり、弁護士による聴き取り調査を行ったりするなどの調査手法に苦言を呈したことがあった。
結論として、調査方針が変更されることは無かったものの、場合によっては調査に不当な影響が生じかねなかった

又時期的には 中居氏事案の報告を2023 年 8 月 21 日湊社長が受けた後 2024年8月 女性AフジTV退職前

B 氏 G 氏 被害者の意向を尊重し、「被害者を守る」ことを標榜して行動しているものの、それが真に被害者のためになっているのか、むしろ、「被害者を守る」ことを隠れ蓑として、自分自身としても「大ごとにしたくない」「不適切事案を明るみに出したくない」という事なかれ主義に基づいて行動した結果にすぎないとも評価できる。

このような構造は、本事案(中居氏と女性 A に関連する事案)とこの重要な社内ハラスメント事案において共通しており、CX の企業風土を表しているものと考えられる。

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